高1春の話。
高校デビューを狙った僕は、クラスの親睦を深めるための二次会、ボウリング会場へと足を運んだ。
遠足の二次会
そんな誰かの一言で、二次会はボウリングに行くことになった。
高1の春。クラスの親睦を深めるための遠足(ハイキング)があり、遠足の後は場所を移動して2次会を行うらしい。
高校生になり新規一転した僕は、どちらかというと活発な方のグループに所属していた。
高校に入って割と厳しめの陸上部に入部したこともあり、そして文武両道という活発な校風ということもあり、気が付いたら体育会系の人たちばかりと仲良くなっていた。
クラスには自分と同じような根暗な性格の人たちのグループもあったのだが、彼らは『超』がつくほどのガリ勉で、休み時間には科学雑誌を開いてニヤニヤしているような天才(変態)の集まりだった。性格的には似ているのかもしれないが、どうしても彼らと仲良く出来るような気がしなかった。
慣れない活発なグループに入った僕は、必死にメンバーの一員として馴染もうと努力をした。周りにノリを合わせ、極力明るく振る舞い、そしてここぞというときにツッコミを入れた(関西)。
教室の隅で固まっていた中学時代からは考えられないような進歩だった。このまま自分は活発な人間として、高校生活をエンジョイできるような気がしていた。
そしてその勢いのまま、僕は二次会のボウリングに参加することを表明した。
事前練習
高校生活で自分は生まれ変わるかもしれない。はっきり言って当時の自分は浮かれていた。
ただ、思考は常に冷静だった。
高校最初のイベント、二次会というスクールカースト上位層だけが参加する空間。何事も最初が肝心。この重要イベント、失敗は許されない。
不安材料は、何といってもボウリングの実力だった。自分にはボウリングの経験がほとんどなかった。確か最後にしたのが小学生の頃で、当時のスコアは70くらいだった記憶がある。
高校生になり筋力がついたことで、今の自分ならスコア90くらいなら出せるような気がした。しかし、一般的な男性の平均スコアは130程度。せめて100は超えないと恥をかく可能性がある。
だから僕は皆には内緒で、こっそりと事前練習をすることにした。
練習、といっても一人でボウリング場に行くなんてことは恥ずかしくて出来ない。だから僕は、自宅でボウリングの練習をすることにした。
練習内容はいたって簡単。
廊下の端にペットボトルを並べ、ゴムボールをひたすら転がすというものだった。
親にもバレたくなかったので、練習は家に誰もいない一瞬のスキを狙った。コツコツ練習を重ね、トータルで2時間はボールを転がしていたと思う。
もちろん実践練習だけでなく、知識の習得にも余念がなかった。
投球フォーム、視線の位置、スペアの取り方からゲーム中に盛り上げるコツまで、僕は幅広い知識を完璧に頭に叩き込んだ。
こういう影での目立たない努力が出来ることが自分の強みだった。
万全の態勢を整え、いよいよ僕は本番当日を迎えた。
ボウリング開始
当日の遠足(一次会)は無難に終了した。まだ入学したてのこともあり、どの人もまだ若干抑えているような、探り合っているような感覚があった。
そしていよいよボウリング。二次会には、クラス40人中25人が参加することになった。男子15人、女子10人くらいだったと思う。かなりの大所帯だ。
予想通りだが、参加する25人に、文化系変人グループの姿はなかった。同様に、大人しい女子グループも参加しないらしい。
参加しているのは活発な体育会系グループの人間だけ。ここで馴染めるか否かが、今後の高校生活を大きく左右する。
突然の誰かの提案。これにより、男女混合チームを5つ作って、チーム対抗で競い合うこととなった。
自然と緊張感が高まる。
ちなみに、僕のグループは男3人、女2人のグループになった。
さらに緊張が高る。
手汗を必死に拭きながら、僕は第一投を慎重に放った。
順調な出だし
一投目:8ピン
二投目:0ピン
三投目:8ピン
四投目:1ピン
五投目:8ピン
まずまずのスタートを切った僕。どうやら練習の成果が現れたようだ。とりあえず真っすぐは転がせる。
僕はほっと胸をなでおろした。
グループの他の人はというと、やはり男子は予想通り上手かった。いきなりストライクやスペアを連発している。
一方の女子はというと、一人はそこそこ上手くて、もう一人はかなり下手だった。
なんて言っていたかは覚えていないが、可愛かったのは覚えている。
そんなこんなで、ゲームは中盤に差し掛かった。
異変
七投目:ガター
八投目:ガター
九投目:7ピン
十投目:ガタ―
ゲームも中盤。七投目に差し掛かったあたりから、突然自分の調子がおかしくなった。
球が全然真っすぐ転がらないのである。
普通に投げれば左にずれ、
修正して右目に投げれば今度は右にずれ、
また左目に修正すれば、今度はまた左にずれ……
とにかく真っすぐ転がってくれなかった。
この突然の乱調により、僕のスコアは30あたりから停滞を始めた。大ブレーキだ。
気が付いた異変はそれだけではなかった。
ガターン!!
ガターン!!!
なぜか僕が投げたときだけ、とんでもない球の衝撃音が響き渡るのである。
それに、みんながなぜかニヤニヤしているのである。
恐らくどこか根本的にフォームがおかしいのだろう。しかし運動音痴の僕は、自分のフォームの何がおかしいのかさっぱりわからなかった。
ガターン!!
十一投目:ガター
僕は目の前が真っ暗になった。
悪夢
そこからのことは思い出したくもない。
想定していた最悪の展開以上のことが起きた。
十二投目:ガター
十三投目:ガター
下手だったはずの女子に慰められる始末。気が付けば僕は、女子含めクラスで一番低いスコアをたたき出していた。
GGG……
画面上にデカデカと晒される僕のロースコア。誰が一番足を引っ張っているかは一目瞭然だ。
十五投目:ガター
十六投目:ガター
そんなことは知っている。この日のために、ボウリングの入門書を図書館で借りて読んだ。
たぶん知識だけなら僕の方が詳しい。
とてつもないまでの下手さに、次第にグループの空気が悪くなっていくのを感じた。
他の人がストライクをとっても、逆にミスをしても、僕を気にして喜んだりいじったりするのを遠慮しているように感じられた。
僕は僕で、みんなに気を遣わせないように必死に自虐して盛り上げようとした。
しかしあまりの痛々しさに、誰も僕のことをイジるようなことはしなかった。
十八投目:ガター
十九投目:ガター
二十投目:ガター
もはや僕のしているゲームは、ボウリングとは全く別のものになっていた。
焦りと緊張もあり、もう一ピンさえも倒せなくなっていたのだ。
時々まぐれでピンが倒れると、女子が拍手で祝福してくれるようになった。自分だけ扱いが小学生のようだった。
そして僕の圧倒的なロースコアが足を引っ張り、僕のグループはダントツ最下位になった。僕に気を遣ってか、ジュースをおごるという罰ゲームは無しになった。
1ゲームで終わればよかったのだが、結局その後、僕はトータル3ゲームも球を転がすことになった。
ゲーム中、僕はひたすらボウリングの存在そのものを呪い続けた。
その結果……
最終結果
\(^o^)/オワタ
それ以来、僕が高校でボウリングに参加することは二度となかった。
つづく
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画像:© 天元突破グレンラガン
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