高1夏の話。
ボウリングでの大失敗により早くも高校デビューに失敗した僕。
そんな僕に、カラオケという新たなチャンスが訪れる……。
きっかけ
前回記事:ねくおた誕生記(7)ボウリングが下手過ぎて高校デビュー失敗
ボウリングでスコア34という驚異の数字をたたき出し、大恥をかいた春の遠足。
この件により自分がリア充にはなれないことを悟った僕だったが、せめてボウリング以外では、普通の高校生として楽しく遊べるようになりたかった。
そんなときに訪れた「カラオケに行こう」という遊びの誘い。
中学時代、僕は一度もカラオケに行ったことがなかった。そして自分が音痴であるという自覚があった。
というわけで、カラオケに向け、僕は一人で猛練習することにした。
カラオケの練習
練習、といっても一人カラオケなんて大胆なことは当時の僕は出来なかった。
こういう練習は誰にもばれない場所でひっそりと行う。それが僕の美学というか言い訳だった。
一人カラオケは恥ずかしくて出来ない。となると、練習場所は自ずと一つに限られてくる。
自宅。
ボウリングの練習と同様、家族が外出するタイミングを見計らい、一人で歌ってみる。このとき、自分の歌声が家の外に漏れるかもしれないというリスクを避けるために、僕は布団に潜って歌うという方法を取った。
絵にするとこんな感じだ。
布団に潜って三角座りし、真面目な顔でJ-POPを歌う僕。
ちょっとしたホラーである。
練習熱心な僕はただ歌うだけでなく、自分の歌声を録音して確認したりもした。その結果……
めちゃくちゃ下手だった。
声変わりしたからか、高音が全然出ていない。音域もクソもなく、ただ一定のトーンの低音、低音、低音……。まるでお経のようだった。
僕はカラオケ本番までの数日間、隙を見ては、
布団に潜る→お経を唱える→録音して聴く→恥ずかしくて悶える
という一連の作業を何度も何度も繰り返した。
しかし何度繰り返しても、僕の歌が上手くなることはなかった。
そして本番
そして迎えた当日。
ボウリングのときとは違い、今回は男だけでの集まりだった。女子の前で恥をかくリスクはないので、少しだけ安心。
既にテンションが高い野球部。やっぱり不安感が高まる。
そしていよいよ大部屋のカラオケルームへ。当時の僕には初めてのカラオケルームだった。異様な騒音と雰囲気に緊張したのを覚えている。
ちなみに、今回のカラオケでの僕の作戦はこうだった。
なるべく気配を消す作戦
最初の段階で既にカラオケを楽しむことは諦めていた。いかに集団から浮かずに最後までやり過ごすか、ただそれだけを考えていた。
自分は歌が下手だ。そして盛り上げるのも下手だ。カラオケは初めてなので、ここでいきなり活躍しようなんて思うのは危ない。ここは確実に堅実に無難にこなし、カラオケそのものに慣れることに専念すべきだろう。回数を重ねれば、徐々に楽しめるようになってくるはずだ。
誤魔化す方法としては、
・飲み物を取りに行く
・トイレに行く
・タンバリンを持つ
などなど手段は色々とある。気配を消すのは大得意だ。しかしさすがに歌わずに帰るのはまずいので、みんなが飽きてきた中終盤を狙って一曲だけ歌うつもりだった。この日のために、なんとか音痴を誤魔化して歌える歌を一曲だけ探して練習してきた。下手くそで笑われても、恐らくボウリングのときのような惨事にはならないだろう。
カラオケルームに入るや否や、慣れた手つきで選曲を始める野球部の坊主。
こうして僕の戦いが始まった。
一曲目
野球部が選んだ最初の曲。それは、
当時なぜか流行っていた曲である。
自分にはこの曲の何が良いのか理解不能だったが、誰かがこの曲を選曲することは想定の範囲内だった。
こうなる展開を予想し、事前にテレビで振付まで確認していた僕。頑張れば曲に合わせて飛び跳ねるくらいなら出来る。
ここまでは計画通り。滑り出しは順調……のはずだった。
が、
え?
突然上半身裸になる野球部。
は?
そして曲が流れる。
野球部が大声で歌い、テニス部が踊り、サッカー部が跳ねる。
野球部が大声で歌い、バスケ部がハモり、ハンド部が跳ねる!!!
歌い狂う野球部、テニス部、サッカー部。
服を脱ぐ野球部、ハンド部、バスケ部。
もう意味が分からなかった。僕の想定したカラオケとは全く違っていた。
周りのテンションが上がれば上がるほど、なぜか異常に冷静になる僕。
なぜか状況を客観視してしまう。
……こいつらは一体何を考えているんだ? そもそもこの行為の何が楽しいんだ?
つい数分前まで普通に会話をしていた野球部の斎藤(仮名)。
数学が得意で頭が良いテニス部の石田(仮名)。
優しくて気配りができるサッカー部の山本(仮名)。
それが今、全員バカみたいな顔をしてはしゃいでいる。これが奴らの本当の姿なのか?
なんなんだあの気持ちよさそうな表情は。理性を放棄したような表情は。あんな顔、よく他人に見せられるな。恥ずかしくないのか?
いや、自分の方がおかしいのか? 他の人にとってはこれが普通の楽しみ方なのか? これが理解できないから、自分はいつまでたっても陰キャなのか……?
そんな色々な事を考えながら、
僕は
上半身裸で無表情のまま跳び続けた。
最終的に
30分くらいで一曲も歌わずに帰った。
それ以来、僕が高校でカラオケに参加することは二度となかった。
つづく
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画像:© ドラえもん
コメント
運動会の応援の時間、テンションの高い周りを見てサーッと引いて、テントの裏に隠れていた自分を思い出しました…笑
周りのテンションが高くなるほどなぜか冷静になる根暗あるある
主の投稿面白いですねー これからも見させてもらいまふ。
あざます!