テレビでたびたび話題になる薬物問題。
果たして人はなぜドラッグに依存してしまうのか。
そしてドラッグに依存する恐怖とは何か。
小説の世界には、一般人には普通体験できないような恐ろしい世界が広がっていました。
この記事では、僕が最近読んだドラッグが登場する小説
『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』
『ゴルディアスの結び目』
を紹介します。
正直メンタルと意思の弱い人にはあまりオススメはしません。
パーマー・エルドリッチの三つの聖痕
(著)フィリップ・K・ディック
あらすじ
遙かプロキシマ星系から、謎の星間実業家パーマー・エルドリッチが新種のドラッグ〈チューZ〉を携えて太陽系に帰還した。国連によって地球を追われ、過酷な環境下の火星や金星に強制移住させられた人々にとって、ドラッグは必需品だった。彼らはこぞって〈チューZ〉に飛びつくが、幻影に酔いしれる彼らを待っていたのは、死よりも恐るべき陥穽だった……現実崩壊の恐怖を迫真の筆致で描いた、ディック円熟期の傑作長篇。
amazon:パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 (ハヤカワ文庫SF)より
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』で有名なフィリップ・K・ディックの作品。
とにかく印象に残っているのが、やたらとリアリティのある(ように感じる)ドラック描写です。
ディストピア的な世界で、現実を逃避するかのようにドラッグに溺れる人々。
彼らの様子が、これでもかというくらいに細々と、そして臨場感たっぷりに描かれています。
正直読んでいて少し気分が悪くなりました。
この作者自身、ドラッグの経験があるとしか思えません。
現実が崩壊していくあの何ともいえない感覚。
ドラッグの疑似体験がしたければ、読んでみるといいのかもしれません。
ゴルディアスの結び目
(著)小松左京
あらすじ
岩だらけの禿山の頂上に建てられたアフドゥーム病院に、奇怪な「憑きもの」を宿した娘が収容されていた。神々しい可憐な顔立ちに反して、鋭い牙を持ち、頭頂部には円錐形の突起が見える。今は異臭が立ちこめた部屋で安らかに眠っているが、鉄の帯でベッドに縛りつけられている――。なぜ、この娘は妖しく変貌したのか? 精神分析医により「憑きもの」の原因追求が始められたが……。人類の果てしない旅、内なる宇宙をテーマにした本格SF。小松左京本人による「あとがき」も収録。
amazon:ゴルディアスの結び目 (角川文庫)より
この小説は短編集で4つの作品から成り立っています。
その中で、ドラッグについて扱った作品が一つ目の『岬にて』です。
その中で、とある島に立ち寄った主人公に老人がドラッグを勧めるという、TVドラマではとても考えられないような場面があるのですが、その中での老人の言葉が面白い。
科学技術が発展し、なんでも効率化を求めるようになった世の中。そんな中で人々は幸せというものを見失っているのではないか。社会の歯車として動くお前達よりは、ドラッグやってるだけの俺たちのほうがよっぽど幸せなんじゃないのか?純粋な快楽を求めて何が悪い?
みたいなことを平気で言ってきます。
ただのドラッグ中毒の老人のセリフなのに、知的で妙に説得力がありました。
「あれ、ドラッグするのもありかも……」
もしかすると、あなたにもそんな気持ちが芽生えてくるかもしれません。
(もちろんドラッグはダメ・絶対!)
老人のような意見をしっかりと跳ね返せるように、自分の幸せをしっかり探さないといけないなあと思いました。
ドラッグについて扱っているのは1作目だけすが、他の作品も興味深いものばかりです。
中でも4作品の中で、いろんな意味で一番やばいのが2作目の『ゴルディアスの結び目』です。
とある評論家が『魔法少女まどかマギカ』を見てこの作品を連想したそうですが、この作品はTVで放送できるレベルを遥かに超えています。
内容については言えません。というか、どう書いていいのかわかりません。
本作では、4作品を通して、人生とは何か、人は何のために生きるのかなどといった、人類にとっての本質的な問題が扱われています。
とにかく全体的に深すぎて、僕の力ではこれ以上この作品の凄さを伝えることが出来ません。というか僕自身、この作品を理解しきれていません。
気になる人は、ぜひ一度読んでみてはいかかでしょうか。
コメント