【犯罪者視点】おすすめの倒叙ミステリ3作

小説
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ミステリ小説が好き。その中でも犯人視点の作品、いわゆる倒叙ミステリと呼ばれるものがかなり好き。

今回は、犯罪者視点の国内ミステリの中でも個人的ベストな3作
『青の炎』
『ハサミ男』
『容疑者Xの献身』
を、僕の感想を交えて紹介していきたいと思います。(ネタバレしないように努めます)


 青の炎

作者: 貴志祐介

十七歳の少年が、家族のために完全犯罪に挑む

湘南に住む櫛森秀一は名門高校に通う優等生。ある日、10年前に母と離婚した養父、曾根が現れた。横暴な曾根から家族を守るため、秀一は法的手段に訴えたが、大人の社会の仕組みは、秀一のささやかな幸せを返してはくれなかった。母親の体のみならず妹にまで手を出そうとする曾根に、ついに秀一の怒りは臨界点に達する。

激しい怒りは、静かな激怒へ変わり青い炎が、秀一の心に燈った。自らの手で曽根を殺害することを決心した秀一は、完全犯罪を計画する。

青の炎 Wikipedia より

ここがポイント!

  • 主人公、秀一の視点で描かれる濃厚な心理描写

世の中には絶対的な悪人がいて、そしてその悪人が今、自分の愛する人間を傷つけている。そしてその悪人から家族を守るためには、その人物を殺すしかない。
そんな状況に追い込まれた秀一は、遂に殺人を決意する。それも絶対に警察にばれない、完全犯罪をめざして……。

倒叙ミステリの魅力として、第一に挙げられるのがやはり犯人の心理描写。本作では主人公である秀一の内面の変化がとても丁寧に描写されています。
緻密な計画を練り、こつこつと準備をしながら感じる興奮。
平穏な生活を奪った曾根に対する強い怒り。
人を殺す寸前の緊張感。殺した後の達成感。
殺人犯になったという苦悩。
警察の捜査が迫る焦り。
そして家族を守るという一貫した強い思い……。
こうした様々な感情が混ざりあいながら、秀一は現状を打破しようとただひたすら奔走するのです。

人を殺すことはいけないこと。それはもちろんのことですが、僕は秀一に感情移入し、そして応援せずにはいられませんでした。

高校生が誰かのために殺人を犯す。悲しくて切ない青春小説です。

 

ハサミ男

作者: 殊能将之

必ずもう一度読みたくなる衝撃の結末

舞台は2003年の東京。女子高生2人が同様の手口で殺害される事件が発生していた。2件とも被害者の喉にハサミが深く差し込まれていたことから、マスコミは犯人を「ハサミ男」と命名。ハサミ男は連続猟奇殺人犯として世間の耳目を集めていた。

一方、ハサミ男は3人目の犠牲者を選び出し、入念な調査を行っていた。しかしその調査の中で、自分の手口をそっくり真似て殺害された犠牲者の死体を見つける事となる。先を越されてしまったハサミ男は、誰が殺害したのか、なぜ殺害したのかを知るため調査を開始する。

ハサミ男 Wikipedia より

ここがポイント!

  • 事前知識無しでとにかく読め!

この作品に関しては、何をどう書いて紹介すればいいのかよくわかりません。というのも、あまりにも緻密で大胆なトリックが散りばめられ過ぎていて、何を書いてもネタバレになってしまうような気がするからです。なんだか「ネタバレ注意」と僕が説明してしまうこと自体も面白さに影響を与えてしまいそうな気さえします。
僕のブログの続きなんて見なくてもいいので、すぐにこの本を読みはじめてください。

とてもデリケートな作品です。なので間違っても『ハサミ男』で検索なんてしてはいけません。ラスト数ページで味わうことの出来る衝撃は、ネタバレを知らない人に一度だけ与えられるご褒美です。
ああ、まだこの小説を読んだことのない人が羨ましい。

そして運悪くネタバレを知ってしまったというそこのあなた……。

大丈夫、まったく問題ないです

ネタバレを知っていても全然楽しめます。というよりも、ネタは一つや二つではないです。
そして面白いポイントも一つではありません。主人公、ハサミ男のサイコパスな価値観にも注目して読んで欲しいです。

女子高生を次々と襲うハサミ男。一方で自殺願望を持っており、自殺未遂をすることが日課という変わった趣味(?)を持っています。さらには幻覚症状があるのか、他人には見えない謎の相手と会話をしています。そしてそんなハサミ男が、作中では探偵のようなポジションで動きまわるのです。まさにカオス。だけどそこが面白い。

ハサミ男、とにかくおすすめです。

 

 容疑者Xの献身

作者: 東野圭吾

天才物理学者VS天才数学者

天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に密かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うために完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。

文春文庫『容疑者Xの献身』 より

ここがポイント!

  • 天才数学者の弱点

僕は合理的な天才キャラが大好きです。感情などという曖昧な要素を出来るだけ排除し、出来るだけ論理的な思考で問題の解決に努める。そんなキャラが登場するだけでわくわくします。
本作の主人公、石神もこのタイプの典型例です。数学的思考で殺人の隠ぺいを企てます。しびれるほどの知能犯です。

天才キャラの論理的思考が好き。
そう書きましたが、天才キャラの真の魅力はそこだけではありません。
天才キャラの真の魅力。それは、天才キャラの天才じゃない部分です。

合理的で冷酷。手段を選ばず感情を表に出さない。そんないかにもひねくれていそうな性格が多い天才キャラですが、彼らも天才である前に一人の人間です。天才であって完璧ではない。どこかに何らかの欠点を抱えていることが多くあります。
天才が見せる欠点。僕はそこで天才キャラに人間味を感じ、そして好きになるのです。

本作『容疑者Xの献身』では、天才キャラ石神の欠点、言い換えると人間臭い部分が物語のポイントとなっています。

数学だけを愛していた孤高の天才石神。そんな彼が一人の女性を愛し、そしてその女性を守るため、絶対にばれない天才的な方法で殺人を隠ぺいするのです。

石神が行った天才的な方法とは。そして天才であるがゆえの欠点とは……?

 

 

3作品ともおすすめです。よければぜひ。

 


 

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