かわいくて面白くて読みやすい。
そんなユーモアSFミステリの紹介です。
普段、本を読まない人にもおすすめ。
あらすじ
古代ギリシャの偉大なる発明家の直系の子孫、アルキメデス博士の発明になるクリク・ロボットをご覧ください。事件が起こるや、計算機としての能力を最大限に発揮し、正確無比な方程式を立て、代数学的に謎を解くのです。その冷徹な推理力の前に、解けない謎などこの地球上には存在いたしません。人類史上初の機械探偵の名推理を描く二大巨篇「五つの館の謎」「パンテオンの誘拐事件」を一挙収録! さらに加えて著者カミが放つ本邦初訳「カミのコント 二席」をも収録する大決定版(笑)
機械探偵クリク・ロボット 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
感想
クリク・ロボットがかわいい
面白かった!
何が面白かったって、とにかくあのロボット探偵クリク・ロボットのなんともいえない可愛さがいい。
あのいかにもロボットといった四角いフォルムに、おしゃれな服、そして頭の上にちょこんと乗ったチロリアンハット。
そんなシュールな格好をしたロボットのイラストが、本作ではイラストとして至るところで見ることができます。
(作者が自分で描いたゆるーいイラスト)
そして、このロボット探偵の魅力は外見だけではありません。
本作は『機械探偵が難事件を解決していく』、という物語なのですが、機械探偵クリク・ロボットには、体中に事件を解決に導くためのいろいろな『装備』がなされているのです。
例えば……
『手がかりキャプチャー』
『推理バルブ』
『仮説コック』
『短絡推理発見センサー』
『思考推進プロペラ』
『論理タンク』
『誤解ストッパー』
『事実コンデンサー』
『情報混乱防止コイル』
『真相濾過フィルター』
『自動式指紋レコーダー』
『解読ピストン』
などなど。
とにかく遊び心満載で、そして捜査をしているときのクリク・ロボットのイラストがこれまたかわいい。
そして、事件の真相を見抜いたクリク・ロボットは、口から事件の真相が書かれた紙を吐き出すのです。
紙には事件の真相が書いてある! これで一件落着! ……かと思いきや、紙に書かれていたのはよくわからない暗号文。
なにやらクリク・ロボットは、事件の真相を暗号でしか教えてくれないらしい。
……いや、普通に教えろよ!
とツッコミを入れたくもなりますが、肝心なところがポンコツなところもクリク・ロボットの魅力の一つ。
まさかの
『探偵が推理をしたけど誰も理解できない』
という状況が発生し、読者や刑事たちが
『クリク・ロボットが何を推理したのかを推理する』
という意外な展開へと物語が進んでいくのです。
翻訳が素敵
本作は1945年にフランスで書かれた古い作品で、原作はフランス作家のカミという人です。
カミはユーモア小説を多く書いた人で、本作の中でも、ユーモア溢れる登場人物の会話が多く見られました。
ユーモア溢れる会話とは、例えばさりげない駄洒落を使ったり、といったような言葉遊び的表現なのですが、この『フランスの言葉遊び』が、翻訳者の努力によって見事に『日本語の言葉遊び』に変換されていました。
会話だけでなく、クリク・ロボットが口から吐き出す暗号も日本語に変換されています。
本筋の面白さを損なわずに、上手く日本語に変換していく。
本を読んでいて初めて、
「この翻訳者スゲーなあ」
と思いました。
クリク・ロボットのかわいさと、
翻訳者の作品愛がいっぱいに詰まった『機械探偵クリク・ロボット』
おすすめです!
画像はamazonから引用
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