ごめんなさい、全部嘘です。
コロナが落ち着いても引きこもりです。
特に人と関わる用事はありません。
基本的にプライベートで職場の人と関わりたくないです。
世間が自粛ムードであることを良いことに、皆と同じで社交的だけど我慢しているフリをしました。
本当はこの一年半、ほぼ誰とも関わらない生活は自分にとって理想的でした。
仕事がフルリモートになり、生産性が向上しました。これからも出社したくないです。
そしてこれからも引きこもり生活を続ける予定です。
コロナだから人と関わる機会が少ないのではなく、そもそも関わる人がいません。
……
なんて言えないまま、自粛ムードが終わりつつある。
自分の周囲の人間が、少し前まではできなかった『本当はやりたかったこと』を、休日にやり始めた。
そしてその出来事や思い出を、誰かに共有したくなり始めた。
その結果、業務時間中に雑談の時間が生じることになった。
リモートワークによって減少したコミュニケーション機会の回復。
最もらしい理由のもとに、週一の打ち合わせの終盤で、一人ひとりが最近起こったプライベートの出来事を話すようになった。
最近行った美味しいお店
久しぶりにあった知人
家族の間で起きた出来事
順番に画面越しで報告しながら、他の人がリアクションを取る20分程度の時間。
その時間が、個人的には苦痛でしょうがない。
自分以外の人間にとっては、業務中の雑談は密かに望んでいたことだったらしい。
どこまでが愛想笑いか私には認識できないが、皆楽しそうに雑談をしている。
誰かが紹介したお店に他の人が行ってみるなど、プライベートなつながりも生まれているようだ。
そして社内チャットでも気さくなやり取りや感情的なリアクションが増えるようになった。仕事のモチベーションも上がっているのかもしれない……。
しかし繰り返すが、個人的には苦痛でしょうがない。
そもそも職場の人間のプライベートに興味がない。
美味しかった感想、楽しかった感情、他人のそんな情報を聞いても何も響かない。むしろ自分の暗い生活と嫌でも比較してしまいしんどくなる。
そして雑談を通して伝わる他人の意外な性格や個性。
そんなものも知りたくなかった。相手の情報が増えたことで、最適な接し方の正解も変わる。相手の個性を知れば知るほど、人によらずに統一した対応をとることが最善ではなくなる。
気さくで感情的なやりとり。
それも仕事で求めていない。状況に応じて『!』を語尾につけるかつけないかの判断基準をようやく定めたところなのに、リアクションのパターンが増え、状況もより複雑になってしまった。
軽い雑談が生じているときに仕事の質問をいれるタイミングはいつがいいか。
全体の雰囲気が明るいときに懸念点やリスクについて話すのは正解か。
そんなどうでもいいことを、業務中につい考えてしまう。
社会人として仕事のために集まっているのだから、当然プロジェクト最優先で行動することは何も間違いではない。
しかし、自分たちの仕事は別に社会にとって必要不可欠なものではない。
失敗しても誰も死なない。成功が難しいわけでもない。大きな価値があるものでもない。お金儲けをするための、巨大なシステムの一部を担っているに過ぎない。
プロジェクトのために常に理性的でいることが仕事としては正しいとしても、それぞれの人間の人生にとっては正解ではない。
会社の多くの人間にとって、仕事をするということはお金を稼ぐための手段でしかない。
人生の目的はもっと他のことにある。そして仕事で生じるチーム内での感情的な繋がりも、人生における重要な要素なのかもしれない。
だからこそ、私は嫌でも雑談に参加するしかない。
毎週雑談のネタを用意して、自分も同じ価値観を持ったチームの一員であることを示さなければならない。
エンジニアとはいえ総合職である以上、人との関わりは避けたくても避けられない。
自分が得意な理性的な会話だけでは、解決できないことも多くある。技術一本で生きる道もあるのだろうが、自分にはそれで許されるだけの実力がまだない。
他の人間が気持ちよく自分語りをするためには、聞き手である私もある程度幸せで充実した人間である必要がある。
そもそも他の人間にとって、同じ給与体系で休みもしっかり取っている人間が、プライベートで何もしていないというのは気味が悪いだろう。関わりづらい認定されてしまうと、業務にも支障が出てしまう。
だからこそ、雑談に参加するしかない。
……しかしそろそろ、取り繕うことにも限界が来ている。
ついにこの前、「今回は特に話すことないです」と言ってしまった。
そしてたぶん、薄々いろいろ感づかれている。
自分が話すエピソードには、一切他の人間が出てこない。
ボロが出始めて、今後の立ち振る舞いをどうすべきかが分からなくなってきてしまった。
色々バレているのであれば、もうまともな人間をする必要もないのかもしれない。
別にそこまで考えなくもいいのに……と自分でも思うのだが、なぜか色々と考えてしまう。
雑談は嫌だ。社会不適合認定されれば楽になれる。
そう思いつつも、内心どこかで楽しそうに雑談する人間が羨ましいのかもしれない。
価値観が合わないから関係を深めたくないだけで、チームの一員として認められたいという気持ち自体はある。
だからこそこれからも、私は業務中に雑談を行う。
コメント