童貞目線から見た『君の名は。』についてのユルい考察。
この映画を観てすごく思ったこと。「これって実は童貞向け映画じゃない?」
(※ネタバレあり)
感想・考察
公開から3週間経って、ようやく観に行った『君の名は。』
正直興味がなかったので観る気がなかったが、友人に誘われて渋々観ることに。
その結果……
かなり面白かった
観る前は、
どうせ映像の綺麗さを強調してる作品は中身薄っぺらいんだろうなあ。僕は感性が鈍い方だし、きっとついて行けないだろうなあ。
とか、
なんでも美化する作品は好きじゃないなあ。個人的には、殺伐とした世界観で、登場人物が泥臭くもがいてる作品の方が好みだなあ。
とか、ぐだぐだといろいろなことを考えていた。
実際に、
・映像が綺麗で感性に訴えかけて来る
・なんでも美化しちゃう
という僕の苦手要素がばっちり含まれていたのだけれど、それでも全然楽しめた。むしろ凄い好きな映画だった。
得意なタイプの映画ではないのに楽しめたし、面白かった。
観終えたあとは自分でもなぜ楽しめたのか分からなかったのだが、しばらくしてようやくこの現象の理由に気が付いた。
それは、
童貞に優しい作品だから
とにかくこの映画、童貞が喜びそうな要素が凄く多い。
実は童貞のために作られたのでは? とまで思ったほどに。
童貞要素①:男女の入れかわり
男女が入れかわる作品はかなり多い。それだけ人々の夢であり憧れであるのだろう。
目覚めたら自分が女の体になっている。もちろんその体は触り放題、揉み放題。
童貞に限らず、男なら誰でも憧れるシチュエーションである。
そして童貞的にポイントが高いのが、入れ替わりの記憶が次第にあやふやになるということ。
入れ替わったときの記憶は曖昧になり、次第に夢のように消えていく。
この設定が、男女の入れ替わりに妙なリアリティを与えてくれる。
もっと言えば、『あれ、もしかして俺も入れ替わりしたことあるんじゃね?』と、自分に置き換えて考えやすくなっているのである。
あり得なさそうなロマンと、ギリギリあり得そうなリアリティ。
このバランス感覚が絶妙だと思った。
童貞要素②:運命の赤い糸的演出
童貞は女の子との出会いを大切にする。
自分に運命の相手がいて、それが向こうからやって来ることを望んだりもする。
なぜなら自発的に動くだけの行動力と自信がないから。
『君の名は。』では随所で、主人公とヒロインが時間と空間を乗り越えて繋がる運命の赤い糸的演出がなされていた。
俺は自分の赤い糸を回収してないだけ。自分にとっての三葉ちゃんはきっとどこかにいる。
そんな慰めを、この映画は童貞にしてくれているのである。
童貞要素③:好きになる理由づけが弱い
『主人公とヒロインがなぜ惹かれあったのかわからない』
他の人の感想で、そんな意見が割と多くあった。
しかし、そう思う人たちに僕は一言言いたい。
身体が入れ替わったらそりゃ好きになるでしょ。
相手の全てを知ることが出来る支配感。
逆に相手に自分の全てを知ってもらえる安心感。
この二つが無条件で得られるのだから、それ以上の理由なんて必要ないし描けないだろ!
……と思うのは自分が童貞だからなのだろうか。
さらに童貞的視点でいくと、『ヒロインが主人公に惚れる理由』というのは少ない方がいい。
主人公がイケメンだから惚れました♡
とか
主人公が守ってくれて頼りになるから惚れました♡
とか
具体的で生々しい理由があると、童貞は自分と主人公を比較して劣等感に襲われる可能性がある。
だからヒロインが主人公に惚れる理由は、
何となく優しそうだから
くらいの、童貞視聴者にでも当てはまりそうな微妙なラインの方がいいのだ。
童貞要素④:報われない片思い感
『君の名は。』は恋愛要素が強い映画だが、だからといって主人公とヒロインがいちゃいちゃするシーンが多いかというとそうではない。
『遠く離れた場所で入れ替わりが生じる』という設定の都合上、主人公とヒロインは終盤までお互いに出会うことはない。
そして基本的に、主人公とヒロインの二人の思いはすれ違う。お互いがお互いの気持ちに中々気付かないのだ。
この二人のすれ違う感じ。特に、主人公の報われない片思い感に、童貞は非常に感情移入がしやすい。
童貞の恋愛感情は報われない。というか、報われないから童貞なのである。
童貞要素⑤:全体的にフワッとしている
内容が薄い。心理描写が弱い。
批判的な方の意見で、↑このようなものも多くあった。
確かにそうなのかもしれない。
だが、童貞的視点でいえば、そこまでの深い描写は特に必要ないと思った。
だって理解出来ないから
登場人物の恋愛感情の動き。これを考察するにあたり、必要になってくるのは自身の恋愛経験だろう。
自分はこんな時こんな気持ちになった。あいつはこの状況でこんなことを言っていた。
こんな風に、自分の経験と作品とを比較しながら、共感したり反発したりして理解を深めていくのだろう。
だが、童貞にはそもそも圧倒的に経験が足りない。
特に女子の気持ちの変化なんて、多くの童貞はちっとも理解していないだろうと思う。
(理解していないから童貞なのだし、二次元での経験から理解していると錯覚している場合もある)
だから童貞からしてみれば、心理描写なんてものはフワッとしていても問題ないのだ。
むしろフワッとしていた方が、少ない経験と感覚を当てはめ、理解した気分になりやすいのである。
童貞要素⑥:結ばれてからを描かない
童貞が見たくないもの。それはリア充。
主人公とヒロインが結ばれてなるもの。それはリア充。
彼女のいない童貞にとって、彼女が出来ることはゴールである。
そして彼女が出来た先にあるリア充ライフは未知の領域であり、童貞が想像することさえも出来ない世界なのである。
主人公とヒロインが結ばれて終わる。
『君の名は。』が、童貞が想像できる最高到達地点で終わっているのは、たぶん童貞への配慮だろうと思ったり思わなかったりする。
まとめ
我ながら物凄く気持ち悪い記事になってしまったが後悔はしてない。これが自分の素直な意見だ。
僕が最初に苦手な要素として挙げていた『何でも美化しちゃう』という要素。
これは『君の名は。』に限って言えば、そして童貞的視点で言えば、プラスに働いていたと思う。
言ってしまえば、『君の名は。』は良くも悪くもラノベ的なんだと思う。上で説明したように、モテない童貞の汚い欲求を満たすような作りになっている。
ただ、この『童貞の汚い欲求』を、美しい映像で美化することで『ピュアな青春物語』に変換していることが、この作品の凄いところだと思う。
この作品は、童貞男子にもリア充女子にも評価されている作品である。ただ、観る人によって評価するポイントが全く異なるのではないだろうか。
感性の鈍い童貞男子
「この作品は(自分の欲求が満たされるから)面白い!」
感性の鋭いリア充女子
「この作品は(映像が綺麗でロマンチックだから)面白い!」
童貞男子とリア充女子の意見が奇跡的に一致している。だからここまで幅広い層にうけ、大ヒットしたのではないかと僕は思う。
多くの人が書いているので敢えて触れなかったが、もちろん細かい演出にも良い部分がたくさんあった。そして全体としての完成度も高かった。
しかし何より、童貞の夢が綺麗な形で詰まっているのが素晴らしいと思った。
コメント
素晴らしい考察
ありがとうございます!