黒歴史の自分語り最終回。
ついに憧れのキャンパスライフ。しかし浪人で荒んだ心が、僕の大学生デビューを阻害する。
前々回記事:ねくおた誕生記(11)進学校の落ちこぼれは浪人しがち
前回記事:ねくおた誕生記(12)浪人生、滑り止めは小説家
4月。僕は大学生になった。
振り返ってみると、ここまでいろいろあった気がする。
昔手紙をくれたかおりちゃんの顔はもう思い出せなくなり、
プチトマトを潰された高橋への恨みもとうに忘れ、
参考記事:ねくおた誕生記(2) 社会の厳しさはプチトマトが教えてくれた
逆にうんこを漏らす前にトイレに行くことを覚え、
参考記事:ねくおた誕生記(3)うんこ漏らしたけど白ブリーフに救われた話
金〇日がいなくなっても日本海にミサイルは放たれ続ける中、
参考記事:ねくおた誕生記(4) いじめられっ子をかばった末路
あの日口から放ったカレーは今もトラウマとして記憶に残り続け、
参考記事:ねくおた誕生記(5) 修学旅行で吐いたゲロはカレーの味がした
嘘の告白が真実だったと記憶を書き換えながら、
ボウリングから逃げ、
参考記事:ねくおた誕生記(7)ボウリングが下手過ぎて高校デビュー失敗
カラオケからも逃げ、
本気で走ることをやめ、
参考記事:ねくおた誕生記(9)部活と挫折と
いつしか人を避けるようになり、
参考記事:ねくおた誕生記(10)寝たふりすらも許されない昼休みのぼっち
失敗することに慣れ、
参考記事:ねくおた誕生記(11)進学校の落ちこぼれは浪人しがち
叶いもしない夢から醒め、
そして今に至る。
過去を振り返ってもネガティブなことばかり思い出してしまう自分は、かなり心が荒んでいた。
そして浪人生活でひねくれた心はさらに歪み、それは受験が終わっても一向に治ることはなかった。
そんな自分の性格は、大学生活にも悪影響を与え始める。
サークル勧誘
その後の大学生活を大きく左右するイベント。サークル決め。
結論から言うと、僕はこれに失敗する。
4月。大学生活。新入生歓迎会。大量のビラ。バーベキュー。先輩の勧誘。仮入会。飲み会。
キラキラした大学生に勧誘されるがまま、僕は色々なサークルに顔を出した。
苦しかった浪人生活。無駄に失った一年をこれから挽回したい。そんな前向きな思いは強くあった。充実した大学生活を送りたい。そう思って充実していそうなサークルをリストアップし、充実していそうな先輩に積極的に話しかけた。
にもかかわらず、僕は結局充実していそうなサークルには入らなかった。
それどころか、充実していそうな人間と誰とも友達になれなかった。
その原因は明確に自分の中にあった。
これまで歩んできた暗い日々。その中で生まれたある感情が、いつまでたっても自分の頭の中から消えないのだった。
キラキラした大学生が憎い
もう一人のボク
大学生が憎い。
自分が大学生になったのにも関わらず、その思いが消えることは中々なかった。
思えば浪人時代、僕は真顔で道を歩きながら、すれ違った大学生の生活を勝手に妄想して悪口を考えるというとんでもなく悪趣味なことをしていた。
みたいな。
この“ひねくれた自分”がいつまでも“もう一人のボク”として大学生になった自分に語りかけてくるのである。
サークルを決めるまで
新入生歓迎イベントがあった某日。
オタクサークル(仮)に決まった。
オタクサークル(仮)
こうして僕は、大学生からは本格的なオタクになることに決めた。
自分がキラキラした大学生になれないことは、浪人時代から薄々勘づいてはいた。あの高いテンションはどうも自分の性には合わない。常にそう感じていた。
自分のようなジメジメした暗い人間が集まるオタクサークル。ここならばきっと、ひねくれてしまった自分も馴染むことができる。そう考えていた。
入部してから数日、僕は毎日部室に通い、部員と一緒にアニメを観たりボードゲームをしたりご飯食べにいったりした。
……
……
なんか思ってたんと違った。
オタクサークル(仮)の闇
自分が思うオタクサークル。それは根暗な人間が作品を一緒に楽しみ、ときに真摯に向き合い、面白さを共有する、そんな空間だと思っていた。
しかし、少し違った。
……いや、違わなくはないのかもしれない。部員は全員、作品に真摯に向き合ってはいた。しかし向き合う方向性が、自分の想像とはかけ離れていた。
大変失礼な話だが、一言でいうと、気持ち悪いと思ってしまった。
……いや、別に深夜アニメ好きなのが気持ち悪いというのではない。自分も深夜アニメはよく見ていたし、萌えアニメにも抵抗がない方である。そして別に、部員の皆さんの特殊性癖が気持ち悪いというわけでもない。自分もあまり人のことを言えたものではないし、この国には思想・信条の自由というものがある。
ただ、
ただ、
性癖とか下ネタとか、そういうのを他人がいる前で堂々と話すのはどうかと思った。
(深夜アニメのエッチなシーンが大音量で流れる)
みたいな会話を日常的に行っているのである。
ちなみに隣の部屋は茶道部だった。音量的に絶対隣にも聞こえていたはずである。僕は常にヒヤヒヤしていた。
こんな感じの会話は、外の飲食店でも行われた。隣の席に小さい女の子がいたりするのに、である。
周りの迷惑も考えずに下品な会話する行為が嫌になったのもあるのだが、それ以前にまず、なんかアニメのキャラ名とかを声に出して会話すること自体にものすごい抵抗感が生じてしまっていた。普通に真面目な作品の考察でさえ、面と向かって話すことになんとなく違和感を感じるようになった。
さらにネット特有のノリとかフレーズとかを、声に出したりすることも何故かすごい恥ずかしかった。なんか馬鹿らしいと思ってしまった。周りが盛り上がるほど冷めてしまうこの感覚は、高校時代に活発なグループでウェイウェイしていたときの感覚に近かった。
そして僕には前提としてのオタク知識が全然足りていなかった。部員がするほとんどの会話に、僕はついていくことができなかった。誰もにわか知識の自分に合わせてはくれなかった。頑張って足りない知識を埋めようとも思ったが、そもそも趣味でやってるのに頑張る、という発想が出ること自体何かが間違っているような気がした。次第に周りで流行っているものへの興味が薄れていくのを感じた。
結局リア充もオタクも同じだ。
しばらくして僕は思った。
コミュニティにはコミュニティ特有のノリがあり、前提知識があり、ルールがある。メンバーはそれぞれ自分の興味を追い求めることに貪欲で、ときに周りの目を気にしない。自分と好みが似た者同士が集まって、自分をさらけ出し合って、馬鹿になることで一体感が生まれる。そうしてみんな仲良くなる。
何事にも全力になれず、冷めた目線を捨てきれず、常に他人の目線を気にしている自分は、結局どこのコミュニティにも馴染めないのだと悟った。
オタクサークルに入部してから一か月。
僕は早くも幽霊部員になった。
そしてまたぼっちになった。
おわりに
というわけで、キラキラした大学生になれず、オタクにもなれなかった僕は、クラスでも友達ができずぼっちになってしまった。
たぶん、僕は入るサークルを間違えたのだろう。
もっと緩くて常識的な(?)サークルであれば、馴染めることができたのかもしれない。もしくは全く新しいことを始めていれば、違う自分に成長する未来があったのかもしれない。
そう考えはしたが結局何も行動を起こさず、あっという間に大学1年の冬。気が付けば僕は二十歳になっていた。
相変わらず大学ではぼっちのままだった。
集団に馴染めないひねくれた根暗。オタクになれないオタク。
そんな意味を込めて、僕は自分のような人間を『根暗オタク』と名付け、ねくおたと略した。
「ブログを始めてみよう」
そう思ったのは、ちょうどその頃だったと思う。始めた理由はなんとなく暇だったから、である。特に深い理由はない。
そんなこんなで誕生した『ねくおた』という怪しいブログと『ねくおた』な人間。
ねくおたによる黒歴史は、今もどこかでひっそりと更新され続けている。
おわり
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画像:© 四畳半神話大系
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